恋舞曲~雪の真昼に見る夢は…~
「よく映画とかで、死んだ家族や恋人なんかが姿を現して主人公と話をするシーンがあるじゃない? あーいう現実にはありえない夢のような出来事のことを“白昼夢”もしくは“デイ・ドリーム”っていうのよ」

「白昼夢……デイ・ドリーム……」

どうりで5コ上で20歳だったはずの剛が、18歳のあたしと会話するなんていう、ありえないシチュエーションがフツーに成立していたわけだ。


それにしても、なんであたし剛の白昼夢なんて見たんだろ?

アイツ、自分のことを忘れないでほしい、って思ってるってコトなのかな?

それとも、あたしの心の中にアイツに対する後ろめたさがあるってコト?

だけど、会えなくなってもう3年。そろそろ忘れてもいい頃なんじゃないか、って思う。

あたしだって新しい生活をはじめたんだ。

いつまでも後ろを振り向いてばかりじゃ、前には一歩も進めない。


窓の外は、まだ雪だった。

空から舞い落ちる雪はとてもきれいだ。だけど、やがては溶けてなくなる。

剛と過ごした時間もキラキラと輝いていた。だけど、やがては過去の出来事として忘れ去られてしまう日がくるんだ――――
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