幻妖奇譚
いらっしゃいませ。
 暑い夜が続いておりますね。

 こんな夜にはぴったりのお話がございます。良ろしければおひとつお聞かせ致しますがいかがでしょう?

 は?私めは誰か、と?

 大変失礼致しました。私としたことが、手前の名も告げずとは申し訳ありません。

 私は貴方様に、最高のお話をお届けする大役を仰せつかりました案内人『妖魅(よみ)』と申します。

 撥ね除けていらっしゃる掛け布団を手離せなる事、請合いでございます。

 そうですね……。初めてお聞きになるのであれば、こちらのお話がよろしいかと存じます。


 では、こちらの蝋燭の火をご覧になってお待ちくださいませ。



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