幻妖奇譚
 アケミの態度にカチン、としたヨシエは、先輩から伝え聞いた話とは違う結末を話し始める。

 その選択により、3人の娘は身の毛もよだつ体験をするのだが、それはまた後の話。


「……ただ出て来るだけじゃないわよ? その男の人、散らばった花をずっと探し続けてるらしいんだけど、どうしてもある花だけが見つからないらしいの」


「……ある花って?」

 アケミとチエが声を揃えて問い掛ける。


「簡単に手に入らない幻の花なんだって――だから……」


「だから?」

 ゴクリ、と生唾を飲み込みヨシエの話に聞き入るアケミとチエ。






「困り果てた男の人に“こんな所にあった”って真っ赤な花にされちゃうの」


「待ってよ。どうやって花にするのよ?」

 アケミが訝しげな表情を見せる。

「甘いわよ、アケミ。“真っ赤な”って言ったでしょ? つまり、殺されちゃうのよ……真っ赤な血が身体全身から噴き出すくらいに、ね」


 即興で作った結末としてはなかなか良い出来になったわ。と、ヨシエは一人ほくそ笑んだ。

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