幻妖奇譚
「元々、あたしは沙希の一部……闇の部分だもの。入れ替わったって不思議じゃないわ」

「……闇、の部分?」

「あたしは沙希の黒い感情を引き受けてきたの。それを認めたくないのなら、沙希がそこに存在する意味がないわ」

「…………」

「沙希。あたしと替わるか受け入れるか、今すぐ決めて」

 ……サキはあたしの嫌な部分をずっと映し出してたんだ。綺麗なものしか見ようとしなかったあたしを、ずっと支えててくれた。なのに……。

「サキ……ごめん、酷い事言って……。サキは嫌な事をずっと引き受けてくれてたんだよね。……認める、受け入れるよ……サキ」

「沙希。じゃあ、この記憶……沙希も一緒に感じてくれる?」


「記憶?」


「昨日の……沙希が教えてくれた3人を…………殺した時の記憶」

「それ……あたしの記憶にするって事?」

「そうしないと、本当に受け入れた事にならないの」


「……わかった」

 鏡に頭をつけて、目を閉じる。

 時間がさかのぼり、昨日の夕方――16時。

 鏡の向こうに短い髪の女の子が見える。


 ――みちるだった。




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