幻妖奇譚
「パ……パ?」

「知らないとでも思ってたのか? 当時、沙希のクラスの少女が3人も同じ日に変死したんだ、気付かない訳ないだろう?」

 ほんの一時前とは違う意味で鼓動が早くなる。

「何言って……なんであたし、が?」

「ああ、そうだな……。正確には鏡の中の沙希、か」

「……!!」

 困惑して声が出せないあたしにパパはにっこり、と笑う。

「沙希は覚えてるかい? ママがいなくなった日の事を」

 忘れるはずがない。あたしはコクン、と頷く。

「あの時、沙希はとても喜んでいたね? “妹が出来た”とね。ママがいなくなって泣くどころか、満面の笑みを見せてくれた。嬉しかったよ、さすがはパパの娘だと自慢したいくらいだったよ」

 ……そんな昔からサキの存在に気付いてたの?

 その時――ふ、と恐ろしい考えが頭をよぎる。

「ま……さか、パパ、ママを……殺したんじゃ……?」

 パパは一瞬驚いた顔をした後、くすっ、と笑う。

「パパは美沙を、ママを今も愛してるんだよ? 殺すワケないだろう?」

「ッじゃあ! じゃあなんでママいなくなっちゃったの!?」

 小さい頃からずっと不思議だった。どうしてママは沙希を置いていなくなったのか――。パパが口を開く。

「そうだね。でもその前に夕飯にしようか。今日はパパが作るよ。……話はそれからだ――」



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