幻妖奇譚
 それからパパはママの高校卒業を待って結婚した、と教えてくれた。……ママのお腹にあたしが宿ったから。

「パパはまだ大学生だったけど、美沙と産まれて来る子供の為に大学を中退して必死で働いて来たよ。周りの奴等に馬鹿にされ、こき使われながらだった。けれど悔しくはなかった。気に入らない奴は、鏡に頼んで殺してもらっていたからね」

「今までにどれくらいの人を……殺したの?」

「さあ……何人殺したかな? 嫌味な先輩や上司は片っ端から殺してたからね。……ああ、美沙に嫌がらせして来た近所のおばさん連中も殺したな」

「嫌がらせ……?」

「美沙の過去がね、どこからか漏れたらしい。おまけに美沙は若くて美人ときてる。おかげでいわれのない中傷や僻(ひが)み、根も歯もないことばかり噂されていたよ」

 そこまでを聞いて、あたしの中でやっと納得がいった

「……だからだったのね」

「なんだ? 沙希?」

 10歳の頃光江たちに言われた事をあたしはパパに話した。――ママが不倫していた、と。あれは、ママの過去の過ちがあらぬ方向に飛び火したものだったんだ。

「そう、か……。沙希も言われていたのか。でもママの敵を討ってくれたんだな。……さすがはパパの娘だよ」

 そこまで考えてたわけじゃないんだけど、結果的にはそうなるのかな……。



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