鈴が鳴る~イブの贈り物~
 我慢の限界だった。

 さとるは声を上げ、泣いた。

 恥も外聞も無い。

 泣きたくなったから泣いた。

「だっ、大丈夫ですか? えっ、えっと?」 

 女が顔を覗き込んで来る。

 さとるはフルーツ系の、そう、グレープに似た匂いを嗅いだ。

「泣きたいのはこっちなんですけど。あたしの方が泣きたい。あなたより、絶対に……」

 さとると同じく女も声を上げ泣き出した。二人の泣き声が混ざる。

 泣き声が聞こえたのか、二人が居る前の部屋の住人が顔をしかめて出て来た。

「うるさい」

 その声に向かい、二人は同時に言い返した。

「うるさい!」

「なっ、なっ、なんだ、おまえら」 

 住人は関わり合いたくないと思ったのか、すぐさま扉を閉めた。

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