うさぴょん号発進せよ
そこはトヲルの家のあるドームから、2、3駅先の街外れにあった。

大学から反対方向にあるこの辺りのドームには、トヲルはあまり来たことがない。

かなり古びた建物の多い場所である。今では珍しくなった塔のような建造物や、高層ビル等が遠くの方にいくつか頭だけ見えている。

地球の昔の時代の立体映像でなら、このような風景を見たことはあったが、実際に見ていると思うと、何となく不思議な感じもする。

トヲルが江戸時代の長屋のような建物の横を通り過ぎたとき、ふと気付いた。

そういえば、いつもなら自動(オート)清掃ロボの『ソウ太くん』とすれ違ってもよさそうなのだが、この路地に入った辺りからは、1台も見かけない。

更にヒトの気配すらなかった。この路地へ入り、その入口に何故か設置されていた城門を通過してからは、全く誰ともすれ違っていなかったのである。

トヲルの家も街外れにあり、それほど賑やかな場所とはいえなかったが、ここはそれよりも、更に寂れていた。

トヲル達が到着した場所は、その一角にある古びた2階建ての小さな建物の前だった。

止まっていたコウヅキに漸く追いついた途端、突然コウヅキの手が伸び、トヲルの口を塞いだ。
< 21 / 352 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop