恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



「祐介……さん」



顔から火が出ちゃうんじゃないかと思った。


初めておまわりさんの名前を口にしちゃったよ……。



おまわりさんは、真っ赤になった私の頭を優しく撫でて、

「よろしい。『さん』はいらないけどね」と笑った。





おまわりさんがこんなふうに意地悪だなんて知らなかった。


優しいところとか、強い眼差ししか知らなかった。




けど、意地悪なおまわりさんも好き。


おまわりさんを知るたび、好きなところがどんどん増えていくよ……。




乗車客が減ったバスの中、手を握ってくれたおまわりさんの手を、ゆっくりと握り返した。





< 178 / 712 >

この作品をシェア

pagetop