恋 時 計 ~彼はおまわりさん~


「ただいまー」


私の声に、リビングでテレビを見ていたお母さんとおばあちゃんが振り返った。



「何か良いことでもあった?」

「えっ?」


お母さんの言葉で、自分の声のトーンがいつもと違っていることに気づいた。




「うん。実はね……」


すごく照れくさくて恥ずかしいけど、私はお母さんたちにおまわりさんと仲直りをしたことを伝えた。


ずっと私を心配してくれてたお母さんとおばあちゃん。


二人の優しさをずっと感じてたから……。




お母さん達は、驚くほど喜んでくれた。


恥ずかしくて素直に嬉しいって表現出来ない私の代わりに笑顔をいっぱいくれる。



「なんか……心配かけちゃってごめんね」



本当は『ありがとう』って言いたかった。

けど、その言葉はどうしても恥ずかしくて言えなかった。



家族に恋心を知られてること……

それってなんだか言葉に出来ない恥ずかしさが胸を一杯にするんだ。


子どもと大人の間にいるような感覚。




私は真っ赤な顔で階段を駆け上り、自分の部屋に入った。






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