恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



「ちょっと買い物に出かけたら、腰の調子がまた悪くなったのよ。
そしたらこの方が家までおぶって下さって……」

「そ、そうだったんだ……」



どうしよう……

ここはお礼を言うところだよね?


だけど、この至近距離でおまわりさんを見るなんて……



俯いた私の隣で、おまわりさんが口を開いた。


「もし困ったことがあったらいつでも僕を呼んで下さい。
勤務中はほとんど近くにいますから」

「はい。どうもありがとうございました」


深々と頭を下げるおばあちゃんに一礼して、おまわりさんはドアノブを握った。



あっ……おまわりさんが帰っちゃう!

お礼だけでも言いたい。


だけど、声を出す勇気さえ私にはなかった。


外に出て行くおまわりさんを、黙って見つめた。






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