恋 時 計 ~彼はおまわりさん~

花火が消えるとき



いつもの私だったら、おまわりさんと二人で台所に立つだけでドキドキしてたと思う。


けど、この時の私は智子と拓也くんのことが気になっていた。



そんな私をわかってるおまわりさんは、硬くなってる私の顔に泡の水を弾いた。



「きゃっ」


突然泡が頬に飛んできた私は、目をパチクリ。


「びっくりした?」


悪戯に笑みを見せるおまわりさんの言葉に、私は頬を膨らませた。


「もぅ~、びっくりしたよ」



脹れた頬がおまわりさんの笑顔によってすぐに緩んでしまう。



「ごめんごめん。思ってた以上に泡ついちゃった」


私の頬の泡を自分の腕につけながら、おまわりさんが笑顔で言った。


おまわりさんの男らしい腕に、私の胸はドキッとしてしまう。



ドキドキと高鳴る胸を包み込むように、泡を取りながらおまわりさんが優しい声で言った。


「きっと智子ちゃんたちは大丈夫だよ。
ちゃんと相手を大切に思ってるから」

「じゃあ、拓也くんがおまわりさんに話してたことって……」

「智子ちゃんを傷つけてしまったんじゃないかっていう話」



にっこりと笑うおまわりさんの瞳に、私はとても安心した。


智子と拓也くんは同じ気持ちでいたんだね。

だから、おまわりさんはちゃんと向き合うことを教えてくれたんだね。






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