恋 時 計 ~彼はおまわりさん~


「ついたぞー!」


おまわりさんと拓也くんが打ち上げ花火に点火した後、一斉に花火から身を遠ざけて来た。



私の隣に立ったおまわりさんが、私と視線を重ねてにっこりと笑う。


私は花火の音が鳴ることにドキドキしながら、おまわりさんに微笑み返した。



ねぇ、おまわりさん

おまわりさんの鼓動が、なんだかとても近くに感じるよ……。



おまわりさんの長い指が私の指に絡み、私はそっと握り返した。


二人の鼓動が、同じ速さに感じる……。




ドーンという音と同時に、おまわりさんと私は空を見上げた。



真っ暗な空に、円を描いた花火が別世界を創りあげる。


一瞬の出来事が、なぜかとても長く感じる不思議な時間。



きっと、同じ花火をしても、同じ時を感じることはないんだろうね。


だから花火って、綺麗で儚くて、

一瞬という時を特別に感じさせてくれる。


その一瞬を、瞬きで隠さないようにと祈ってしまうほどに。








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