恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



「おまわりさん、明日は公休だったよね?
帰ったらおまわりさんの家に行っていい?」

『うん、いいよ。首を長~くして待ってます』

「ふふ、ホントに?」

『本当。……早く会いたい』



急におまわりさんの口調が静かになり、私の胸がドキッと高鳴った。


「私も……早く会いたいよ」



修学旅行の間、電話で声を聞くたびおまわりさんが恋しくなった。

けど、今日はもう我慢できない。


おまわりさんの声が、私を寂しがり屋にするよ……。



自然と涙腺が緩み、涙が込み上げてくる。

まるで幼稚園のお泊り会の夜にお母さんを恋しくなった時みたいに。




『早く八橋喰いたいな~』

「えっ??」


おまわりさんの発言で、私の熱くなりかけていた喉の奥が急に冷める。


「私よりも八橋を待ってるの!?」

『さぁ~、どうかな?』

「もぅ~」


明るいおまわりさんの声に、自然と私の声のトーンは戻っていた。


『じゃあ、明日な。最後まで修学旅行楽しんでね』

「うん。おやすみ」

『おやすみ……』



そうだよね。

こんな寂しがり屋でいたら楽しめない。


最初で最後の修学旅行だもん。

たくさんの思い出をつくって帰らなきゃ。






< 319 / 712 >

この作品をシェア

pagetop