恋 時 計 ~彼はおまわりさん~


「おい、そろそろ就寝時間だから部屋に戻れよ」


携帯電話をポケットに入れた私の背後から、鈴木先生の声が聞こえてきた。


やばっ……携帯見られたかな?


振り返った私は平然を装い、コーラを先生の目の前にして口を開いた。


「今ジュース買って戻るところだったんです」

「本当かぁ? 彼氏に電話でもしてたんだろ」


あ……やっぱりバレてる?


顔を歪めた私の胸の中は、先生に携帯を没収されるんじゃないかとヒヤヒヤ。

けど先生は、携帯を没収するかわりに右手に持ってきたシャツを私に渡してきた。


「これ着て部屋に戻れ」

「え……?」

「いくら女子高で周りは女ばかりでも、教師は男の方が多いんだぞ」


先生? 何言ってるの……?


私がキョトンとしていると、先生は少し乱暴に私の頭にシャツを被せた。


「ちょっ! 先生!?」


頭からシャツを避けると、遠ざかっていく先生の後ろ姿が目に入った。



もぅ、なんなのよ……。


訳が分からず不機嫌になった私は、渡されたシャツを手に握ったまま自分の部屋に戻った。






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