恋 時 計 ~彼はおまわりさん~

白桜



時が経ち、今日、今年初めての雪が空から舞い降りた。



「わぁ、おまわりさん、雪だよ!」

「ほんとだ、綺麗だね」


おまわりさんと私は、雪が降りてくる白い空を見上げた。


二人で見る、初めての雪。



「美樹の髪にも付いてるよ」


おまわりさんは優しく微笑み、私の髪に付いた雪にそっと触れた。




あれからおまわりさんと私の交際は順調だった。

変わったことと言えば、おまわりさんが私を美樹って呼ぶようになったこと。



初めてそう呼ばれたのは、進路で悩み、落ち込んでいた私をおまわりさんがあの湖に連れて行ってくれた時だった。


おまわりさんが着せてくれた上着と、風に吹かれ静かに揺れる水面が、

手足をバタつかせ必死に前に進もうとしていた私の心を穏やかにしてくれた。


そして、

『美樹、焦らなくても大丈夫だよ』

そう言ってくれたおまわりさんの言葉が、私の心を温めてくれた。





私は進路希望が明確になっていく友達の中で、一人だけ取り残されていく気がして焦ってたんだ。

夢が見つからない私は、寂しい人間だと思ってた。



けど、良いんだよね。

私は私らしく、自分のペースで見つければいい。


夢は恋と同じで、

無理に見つけようとしても見つからない。



気がついたら心輝いている――


きっと、それが私の『夢』




そう思わせてくれたのは、おまわりさんだった。







< 357 / 712 >

この作品をシェア

pagetop