恋 時 計 ~彼はおまわりさん~

再会




まだ鳥たちの囀りしか聞こえない日曜日の早朝に家を出た。



あの湖に行こう。

思い出とさよならするために……。




家を出て歩き始めた私の背中に、誰かが声をかけた。


「美樹ちゃん?」


その声の主は浅野さん。

久しぶりに会った浅野さんは、少し痩せたように見えた。



「浅野さん、お久しぶりです」

「本当に久しぶりだな。元気だったかい?」

「はい。浅野さんの腰の具合はどうですか?」

「ああ、君がくれた薬が効いて落ち着いてるよ」



良かった……。


浅野さんの微笑みにホッとした。



「お父さんの調子はどう?」

「今はリハビリを頑張ってます」

「そう……。記憶の方は?」

「え……? 今はまだ……」

「そうか……」




浅野さん、ずっとお父さんのこと心配してくれてたんだね。


胸の中が温かくなり始めた時、浅野さんとは違う声が聞こえた。





< 458 / 712 >

この作品をシェア

pagetop