恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



視界がどんどん歪んでくる。


訳のわからない涙が、私の頬を濡らしていた。





やだ……どうして泣いてるの……?




自然と聴こえてくる曲が、胸を熱くする。


今にも瞑れてしまうんじゃないかというくらい、痛みに近い熱さが私の心を埋め尽くそうとした。





この曲……




涙の訳を掴みそうになった私は、必死で泣くのを堪えようとした。




何かで聞いたことがある。


人は、いろんな記憶を持ち、忘れていく生きもの。

だけど、体の細胞一つひとつに、記憶は刻まれてる。

だから、音楽を聴くと、頭では忘れていても、細胞がその当時の思い出や想いを甦らせるって……。






必死で涙を堪えようとした。





だって、この曲は……


おまわりさんの家で聴いた曲。


キッチンの片隅で、おまわりさんが私にプレゼントをくれた時に流れていた曲……。








< 552 / 712 >

この作品をシェア

pagetop