恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
癖のあるアナウンスが聞こえた後、車両がゆっくりとスピードを落とし始めた。
どうやら次は私が背にしている扉が開くようだった。
人の流れがこちらへと作られていく。
獣たちから逃れることが出来る。
それなのに速まる鼓動は、治まるどころか激しく音を立てていた。
「チッ――」
舌打ちの音とともに、獣たちが隣の車両へと移動した。
おまわりさんはその影を、視界の隅から消えるまでずっと見ていた。