恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



待って――!!



どんなに体に鞭を打っても、赤い車には追いつけない。


体力の限界を知らせる激しい吐き気に襲われ、その場にうずくまった。




行かないで


行かないで――‥。





汗と涙で視界が歪む。




どうして、いつも手が届かないんだろう。

向き合おうとすると、追いかけようとすると、大切なものが遠くに感じてしまう。





けど、


それでも、やっぱり向き合わなきゃ。




大切なものを失わないために。





そうすることを教えてくれた一哉……。


一哉と向き合っていくためにも。






顔を拭った私は最後の望みを胸に抱き、おまわりさんの家に向かった。








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