恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



人の気配のない真っ暗なおまわりさんの家。


家のベルを鳴らしても、やっぱり反応は無くて、

私を迎えてくれたのは虫の声だけだった。




どこにいるんだろう……。

あの車の女の人と一緒にいるのかな……。



嫌なことばかりが頭に浮かんでくる。


頭の中を空にするように大きく首を振り、玄関の前に腰をおろした。




不意に見上げた空に、たくさんの星たちが輝いていることに気づいた。



こんなにたくさんの星を目にするのは久しぶりかも。

そういえば、ずっと空を見ていなかったな……。




星を眺めながら虫の声に耳を澄ましていると、人の足音のような音が聞こえた。



急に緊張感で胸を膨らませた私は、その場に立ち上がった。



「おまわりさん……?」






外灯のない暗い視界の中に、おまわりさんの姿が現れた。





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