恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



「あの……」


言葉を詰まらせた私に、名取さんがゆっくりと口を開いた。


「知らないことがあるって、不安よね……」


「え……」


「全てを知りたい?」



一瞬「知りたい」という言葉が、喉から飛び出しそうになった。


それを喉の奥に押し詰め、私は小さく首をふった。



「……知りたいけど、信じて待ちます。おまわりさんと約束したから……」



本当はすごく知りたい。

あんな怪我までしているおまわりさんを放っておけない。



俯いた私の耳に、名取さんの大きな声が響いた。


「あのバカ!! どこまで美樹さんを悩ませる気!?
……まあ、宮本の気持ちもわかるけど……」



おまわりさんが居る部屋のドアを見つめた後、名取さんは大きく息を吸って私を見つめた。



「正直、今は全てを話せる状況ではないことは確かなんだけど……。
けど、女の私から見て、このままでは辛すぎるわよね……。かといって、真実に近づいても辛い思いをする。宮本は、それを避けてるのよ」



真実に近づくことを避けてる……?

じゃあさっきの約束は、私のため?



「美樹さんが決めていいわよ。
このまま待つか、真実に近づくか」



私はゆっくりと頷き、口を開いた。


「教えて下さい」







< 622 / 712 >

この作品をシェア

pagetop