伝えたいんだ
笙多兄に場所を告げて独り暮らしのアパートに戻った私は、何故だかまた、笙多兄の腕に逆戻り。




「笙多に…ふ――っん」


呼ぼうとした名を、また温かい熱が塞ぐ。



ぱっ、と離すときになる音が恥ずかしくて、思わず耳を塞ぎたくなる。






「また『笙多兄』に逆戻り?」





「、っ」





だって




笙多



なんて、


恥ずかしくって言えないよ










「俺さ。結花と離れる前、『彼氏んちに泊まり?』って聞いたじゃん。」


「…………」







『そんなキャリーバックなんて持ってどうしたんだよ。』











『これから彼氏んとこで泊まりか?ははっ』

















彼氏なんて、いないって否定したかったあの時。







私が好きなのは笙ちゃんだけだよ、って言いたかったあの時。












私があなたから、


離れる決意を、した時。
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