【SR】メッセージ―今は遠き夏―

顔を見つめたまま、動かない。

おそらく、店の客なのか否かを、懸命に判別中なのだろう。


「お久しぶりです。蒔田です。

覚えてるかなあ。8年前くらいによく来てたんだけど」


繁人の言葉を聞いて、女性はすぐに、目線を隣の百夏にも移した。

一瞬にしてその表情が変わったのがわかり、百夏は思わず唾を飲んだ。




「……シゲちゃんよね。覚えてるわよ。

隣にいるのは……百夏……ちゃん?」




女性の肩は、小刻みに震えている。

花束を覆った包装紙と衣服が擦れ、カサカサと僅かに音を立てた。


「そうです。百夏です……。

今日は、いろいろと教えて欲しくてここまで来ました――」

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