今宵、月の照らす街で
連絡から15分。


辿り着いた現場は慌ただしく動いていた。


「明奈さん!」
「隊長っ!」


明奈の到着にスタッフの視線が集まる。その視線には、戸惑いと、得体の知れない恐怖が感じられた。


「状況報告!」


「全く以て不明…陰の気が展開の終えた隊員を…喰らいました!」


明奈の耳を疑う報告。


「何ソレ…」


思わず言葉に詰まる。


―――さっきのみんなの視線は、こーゆー意味だったのね…


「展開を狭めて!ただ陣形は被らせないようになさい!」


明奈が指示を出す、その空には朱く染まる月が見える。


そして、月の雫の様に、雪が静かに舞ってきた。


その月夜の中から一人、ダークスーツの男が地に叩き付けられ、明奈の足元に転がる。


「ち…長官!!?」


よく知ったその顔の額から血を流し、ダークスーツは刃物で傷付けられ、所々血に染まっていた。


「救護班急いで!」


「た…隊長…あれ…」


長官を抱えながら、明奈はスタッフの指差す空を見上げた。


「…え?」


鮮血の月を背景に、スタッフを見下ろすのは―――


「兄…さん…?」


春日明人。


明奈の唯一の―――…肉親。
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