今宵、月の照らす街で
最近の成二の日課となってる、白い扉を開ける。


「あら。今日も来てくれたの?」


紘子の病室。


成二はベットの隣に腰掛けた。


「これ。暇潰し用に」


小説が10冊入った袋を花瓶の隣に置く。


「アリガト。ここに来てくれるのはとても嬉しけど、受験勉強は大丈夫?」


姉の言葉に顔をしかめる。


「進路がなぁ…宮内庁にこのまま入ってもいいし」


とは言うが、高卒では終わりたくないと言うのが、成二の本心だった。


「せめて大学は行きなさいな」


「だね…」


そんな会話に没頭していると、静かに扉が開いた。


「紘子、調子はいかが?」


多香子が果物を手に入って来る。


「最近は問題無し。もう退院したいくらい」


成二が椅子を譲ると、長女は優しく微笑み、妹の頬に手を触れた。


「ダーメ。キチンと休みなさい」


紘子が少し俯く。


「…みんなが私達を護ってくれてる事に甘えるのは嫌」


「気持ちはわかるけどね。でも、紘子のやるべき事は体を治す事!違う?」
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