今宵、月の照らす街で
渋谷駅前。


普段途切れる事の知らない人波は消え去っていて、スクランブル交差点には、半人半鬼の姿が見える。


「あーもう!マスターと猫ちゃんが居たら楽なのに!」


「明奈さん、それ誰?」


剣一郎が日本刀を左手に携えて質問する。


「同業!」


半人半鬼のモノの背中から新たに漆黒の禍々しい腕が生える。


その腕は、ズリュっと生々しい音を立てて、剣一郎に向かった。


「剣一郎っ!」


剣一郎は右脚を前に出して静かに息を潜める。


瞬間、剣一郎の太刀が閃いた。


「オオオォォォ!!」


半鬼が叫び、赤い血飛沫を散らす。


「え?血?」


斬った本人が驚く。


それを見た明奈も、ゾクンという寒気に奮える。


「人なの?」


―――人と魔の融合体なんて聞いた事ないわ!


死霊が鬼になるのは日常的に有り得ることだが、これは明らかに異例。


「なんだコイツ…!」


剣一郎が再び刀に手をかける。


「やめなさい剣一郎!多分斬ったらまた…!」


―――せめて動きが止められれば…!
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