今宵、月の照らす街で
「嵐月時雨」


突然の剣の嵐が半鬼の動きを封じた。どうやら明奈の願いは、天に届けられたらしい。


「遅いわよ」


着地した弟子は、明奈の言葉に顔を引きつらせている。


「す…すみません…」


「嘘。よく来てくれたわね」


成二に視線を移すと、目の前の敵から視線を離していなかった。


―――既に臨戦態勢に入っているようで頼もしいこと。


「あれは…半鬼?」


明奈の後ろからは、多香子の澄んだ声が聞こえる。


「あれが?激レアじゃない…多香子、よくわかったわね」


明奈が振り返る。多香子は眼を細め、しばらく考えに耽っていた。


「すみません多香子さん…一太刀…入れちゃいました」


謝る剣一郎に多香子は微笑む。


「仕方ないじゃない?この霊圧と特異点での判断は不可能だもの」


そして、大気が震えた。


「来る」


成二の声を聞き、対象に目を向ける。嵐月時雨の檻は、今にも破られそうな様子だった。


「各室員に指令。現時刻を以て除霊対象を殲滅対象へと移行。ここにいる以外の者は下がって」


多香子が後ろで無線に指示を出す。


「多香子?みんなを下げたら対象は誰が…」


明奈の言葉を遮るように、風が多香子を包む。


「私が祓います」
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