今宵、月の照らす街で
「嵐紋・菊一文字」


多香子の左手に荒々しく風が集まる。


風はやがて淡い光になり、小龍沢当主の証が姿を見せた。


「みんなが護ってくれるって言った時…凄く嬉しかったよ」


静かに語り出す多香子。


「護ってくれるのは嬉しい。でも、みんなに依存してちゃ駄目だよね」


多香子はそのまま、ゆっくり半鬼に向かって歩き出す。


半鬼の背中からは、108の触手が飛び出し、多香子に切っ先を向けた。


「姉貴っ!!!」


成二の声と同時に、触手が多香子に伸びる。


「だから、私も闘う」


触手は多香子を貫かず、不思議と避けていく。


その正体は、多香子の纏った、蒼い突風。


「誓う。私は皆と闘い抜くの」


多香子が太刀を振る。すると、半鬼は風船の様に膨らみ、勢いよく、黒い瘴気だけが弾け飛んだ。
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