今宵、月の照らす街で
報告を簡単に終えた成二に、多香子は先に帰ってて、と一言言った。


多分、梅宮と打ち合わせか何かがあるのだろう。


執務室を出ると、まだ明奈が激論を繰り広げていた。


―――よくやるな…


そう思った矢先。


「せーちゃん」


「葉月」


正月に会ったばかりなのに、少し大人びて見えるのは気のせいだろうか?成二は少し違和感を感じた。


「今日は…お疲れ様だな。わざわざ京都から」


葉月は微笑んで首を振る。


「ううん。せーちゃんだってお勤めだったんでしょ?」


「まぁね」


「お疲れ様」


「お………」


返事しようとした時、ついつい欠伸が出てしまう。


「疲れたよね…また今度、ゆっくり話そうよ」


葉月はニコニコする。


思っていた以上に疲れている事もあって、葉月の言葉がありがたく思えた。


「OK。約束な」


葉月は頷いて、おやすみ、と手を振った。


成二も、おやすみ、とだけ残して、対策室を後にした。
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