今宵、月の照らす街で
「…どした?」


「…へ?」


また成二に顔を覗かれる。無意識にぼーっとしていたようだ。


「ごめんごめん!何でもないの」


「?」


慌てる葉月と、それに首を傾げる成二。


「そう言えば、昨日の任務、何だったの?」


話を反らすかの様に慌てて尋ねると、成二は片手で頭をわしゃわしゃとかいた。


「…鬼神退治だよ」


「鬼神?出たの?」


鬼神。


強い悪意のある者の念が無数に集まって出来た、霊的濃度の高い、上位怨霊。


発生条件が特異的であるが故、滅多に報告される件数が少ない。


ただ、報告された際に任に就くのは陰陽師の中でも上位に位置する者のみ。


「でも、ちゃんと倒したよ」


しれっと報告する成二に、少し拍子抜けする。


―――私には無理だなぁ…


少しうつむくと、成二は真っ直ぐ瞳を見つめて口を開いた。


「そんな事ないだろ」
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