今宵、月の照らす街で
「明奈さん…」


葉月が口を開いた。


「久しぶりね、葉月」


明奈の笑顔に、葉月は懐かしさと胸に秘めていた哀しみが溢れ出し、知らず知らずに涙していた。


「どうしたの?」


「だって…いきなり…いなくなっちゃうんだもん…ビックリしたんだよ?」


「あ〜…」


明奈が少し困った顔をして、千鶴に視線で助けを求める。


千鶴は視線に気付いたが、明らかに視線を落とした。


―――薄情者…


明奈の拗ねた顔を見兼ねて、弟子が口を開こうとすると千鶴がテーブル下で成二を蹴った。


「いっ…」


―――口出ししないの!


鋭い視線と、びびる成二。


しばらくすると、重い空気の中で明奈が口を開いた。


「ごめんね、葉月。黙って出た事は謝るわ。でもね、私は場所を変えてもやらなきゃならない事があるの」


「やらなきゃならない事?」


明奈は申し訳なさそうに、葉月に声をかけた。


「そ。いつか話すね。だから今は待ってて?」
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