今宵、月の照らす街で
「“金”の気、全開じゃない」


結衣の呟きの前で、無作為に伸びた数多の金属の刃の中に佇む京介。その数は、成二の従える大剣108本以上。


「八龍の中で“金”気を司る一族、鏨家当主…ですか」


“陰”は興味深く京介を見る。


京介は構わずに右足で小刻みに2回、地面を叩いた。


コンクリートから突き出ていた金属は全身を表し、宙に浮かぶ。


「行け」


刃が飛び、“陰”に向かう。“陰”は人型を解除し、黒い霧となって全てを回避した。


「そりゃフェイクだ」


「!!」


見上げれば、宙を舞う京介の姿。


そのまま、京介の蹴りが“陰”を捕らえた。


「ガァッ!?」


まだ黒い霧の姿だったものの、“陰”に大きなダメージが与えられる。


「な…に…」


人型に戻る“陰”の表面は、脆くなって崩れていた。


「“金”気の特性は“貫通”。桁違いの京介が練った気ならば、霧になったって回避出来ないよ。だって、空間すら貫くし」


結衣の呟きに、敵は信じられないと言わんばかりの表情を浮かべる。


結衣は構わず、もう一度口を開いた。


「それで?他の場所にも同時にキミたちが現れたって事は、なんか目的あるんでしょ?」
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