今宵、月の照らす街で
「も…目的…」


“陰”は呟く。


壊れた人形の様に、その言葉を繰り返し、やがて笑い声を上げた。


「フ…フフフ…」


「何が可笑しい?」


京介の言葉を聞いて、笑い声が止む。


「貴様等、八龍の誰かをココに呼ぶコト。それが我が目的…そして!」


“陰”の波動が強くなり、靖国通りに倒れる死体から、黒い瘴気が溢れ出し、“陰”に吸収された。


「約束されたのは、八龍と対峙すれば、私の力が覚醒に至るという事実!言わばそれが目的ですよ!」


ついさっきまで脆くなっていたその姿は、再び形を保ち、禍々しい波動を漂わせる。


「先程の一撃は油断しました。ですが…もうチャンスはありませんよ」


強い殺気が地面を震えさせる。


瘴気の影響で、砕けたコンクリートは脆く風化していった。


「闘うのは大嫌いなんだけどなぁ…そんなに上手く行かないか…」


後ろに下がって傍観するつもりでいた筈の結衣が、京介と並んだ。


憂鬱げな表情は消えないまま、瞳を閉じる。そして、蒼い波動が結衣を包んだ。
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