今宵、月の照らす街で
政都宮内庁千代田庁舎2F仮対策室応接室。


本来は天皇・蓮舞天照院家が政都東京公務の際、江戸城迎賓館敷地内の、この庁舎が使われる事がある。


先日崩壊した霞ヶ関庁舎から拠点を移した対策室は、連日連夜に渡り結界を解除する方法を探していた。


小龍沢家と八龍を筆頭に話し合いは開かれるが、どうしても解決策が見つからない。


また、壥直仁もアルファとの闘いで大きな傷を負い、意識が戻っていない。


「ほら、しゃんとなさい?」


紘子に急かされて、連日の疲れが残る剣一郎はソファから身体を起こす。剣一郎は寝ボケ眼で時計を見ると、もう10時を回っていた。


しかし、眠ってからまだ4時間も経っていない。


だが、よくよく考えて紘子も同じ状況。それを思うと、剣一郎は怠い身体をソファから起こした。


「紘子さん…眠くないんすか?」


「そりゃ眠いかな?でも、私達が立ち止まる訳にはいかないでしょ?」


紘子は振り返って応接室から仮対策室に戻る。


パタン、と静かに扉が閉まる音が響いた。


「対策室の女性は逞しいねぇ…」


寝癖で頭が爆発した剣一郎も、その後に続いた。
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