今宵、月の照らす街で
「みんな…大丈夫かなぁ」


京都とは遠く離れた東京政都に、少し複雑な面持ちで空を見上げる、谷崎はるか。


彼女は、京都宮内庁東京政都霞ヶ関庁舎の廃墟で、まだ稼働している救護室から、窓越しに夜空を眺める。


あれほど紅く、荒れていた空は風が凪いていて、静けが夜を支配していた。


「大丈夫だよ」


三澤和弥は、はるかの肩に手を乗せて優しい口調で話し掛ける。


「大丈夫に決まってる」


「直仁さん!」


救護室のベットに横たわる壥直仁が身体を起こした。


「無理しないで下さい…まだ傷は癒えてないんですよ?」


和弥とはるかが、壥家当主に近寄る。二人に咎められた直仁は再びベットに横たわりながら呟いた。


「室長が負ける訳ない…それに…バカ剣一郎…負けたら俺が殺してやる…」
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