今宵、月の照らす街で
「さて…」


向かって来る龍を正面に、成二は大剣を担いだ。明奈の力で凶暴さが増したその姿から、とてつもないプレッシャーがほどばしる。


「小龍沢式退魔術…奥伝壱ノ型」


成二の身体に眠っていた気が全て解放され、荒れ狂う風が大地を削りだす。


向かってくる龍は臆することなく咆哮を上げ、成二を喰らおうと近付く。


成二は担いだ大剣を、自分を軸に一回転薙ぎ払った。途端、烈風があらゆる魔を風化させながら拡がり、龍を飲み込まんとする。


「轟龍[ゴウリュウ]」


明奈と千鶴の龍が、烈風に飲まれる瞬間に放たれた咆哮が轟き、烈風が周囲に拡大する。


室員は八龍の作り出した結界に包まれたが、その結界ですら今にも崩れそうだった。


突然、荒れ狂う風が凪いた。


室員が恐る恐る顔を上げる。


そこにあったのは、荒れ果てた清水寺と、立ち尽くす成二、紘子、明奈、千鶴の姿。


そして、彼らを照らす満月だった。
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