今宵、月の照らす街で
皇居前広場。


一般参賀で人々が集まる場所には、死臭が漂っていた。


京都宮内庁対策室のエージェントと思われる人間の死体が、見るも無惨に散らばっている。


10人の政都宮内庁対策室エージェントは、同僚の姿を直視出来ず、その場を駆け抜けた。


「廉明………ッ!!」


明奈の走る足が、少し遅くなる。そしてその声と手が奮えていた。


「明奈さん…」


成二が心配そうに近寄る。


「明奈、行くわよ」


千鶴が凛とした声を出す。


「…えぇ!」


明奈もそれに応える。千鶴はその返事を聞いて、左手で風を呼び起こす。


そして、凪家の龍の波動が姿を表した。


「一刻の猶予もない。ぶち抜くわよ」


左手の龍を、皇居にぶつける。


龍の激怒は即座に竜巻と変わり、轟音を立てて壁を削り、崩れた瓦礫を吹き飛ばした。


皇居は重低音を響かせ、全体がズズンと震える。


えぐれた壁から舞う砂埃や木片が、霧のように漂う。


やがてそれが薄れて行くと、皇居大広間―正月に3神の血族が集まった天玉院の間までの道が拓けた。
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