今宵、月の照らす街で
「やはり…真っ先に殺すべきだったのは小龍沢だったか」


廉明が俯く。


「…おい。やれ」


その指示を聞いた魔が、千鶴達を目掛けて動き出す。


「来たよ、千鶴」


「死なないでね、明奈」


2人が言葉を交わす。


「皆も。生きて戻ってね」


全員が頷き、廉明の召喚した一団へと攻め入る。千鶴がその中心に立つ廉明を見上げると、視線が合った廉明が歪んだ笑みを浮かべた。


「…上等」


千鶴の右手から紅い焔が吹き出す。その右手を、眼前の鬼蜘蛛にぶつけると大きな爆炎が立ち上り、周囲の魔をも包んだ。


「見よ、時宮。遂に三柱が崩れる時が来た。貴様等、陽の一族は闇に飲まれ嵐は消ゆ…なんと痛快ぞ。積年の我が望みが叶う」


倒れる天照院当主の髪を掴み、無理矢理顔を起こす。


「ふ………」


「………?」


一瞬、時宮が鼻で笑った。それを聞き逃さない廉明は、その髪を掴んだ手を、地面に叩きつける。


「ぐあ…ッ!」


顔面を叩きつけられる時宮を見下し、手を離した途端に、廉明は思い切り時宮の頭を踏み付けた。


「何が可笑しい」


「哀れだな…廉明………!」


「…何?」


「お主も…所詮は人よの。月那主宮が悲願を達成出来ると吠えつつも…その寸前で…急いておるのだろう?」


「何?」


廉明が、眉をピクリとさせた。


「今は正に嵐の前の静けさ。覚悟せよ、廉明。総てを消すそれは、直に貴様の前に立ちはだかるぞ」
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