今宵、月の照らす街で
「馬鹿ね。策が無いから、自滅するつもりなの?」


陰が強く女の身体に宿る。


その様子に、速度を緩める事なく結衣は一気に間合いをゼロにした。


「無謀ね。さようなら」


槍の様に変わる腕を振り上げ、女が結衣の右眼にそれを向けた。


結衣の瞳が大きく開く。


それは、驚愕ではなく、決意の瞳。


その瞳が貫かれるか否かの瞬間、走る結衣は思い切って左足で身体を無理矢理止めた。


そして、優しい風が舞う。


結衣が引き連れた風は、穏やかに流れる中から、煌めく粒子を生み出す。


「頭は使いようってね!」


結衣が微笑む。


「グレイシャル・アーツ!」


大気が予兆も無く凍りつき、女の脚を固定させた。


「な!?」


結衣は驚く女をよそに、ジャケットの懐に手を入れる。


「出来れば使いたくなかったんだけどな」


ジャカッと音が響いた。


黒く、鈍い光を放つ44口径マグナムを構え、結衣が標準を合わせる。


「特別製なの」


結衣の右手の人差し指が掛かる瞬間、女は爆発的に気を放出し、結衣の術から逃れる。それでも構わず結衣はトリガーを引き、女を撃ち続けた。


女は弾丸をくぐり抜け、結衣を睨む。


「奥の手って言うのかな…?ま、そうゆうのって、とっとくと楽よね」
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