今宵、月の照らす街で
その弾丸に射抜かれる事はなかった。


その弾丸は、霞結衣の気が宿った弾丸だった。


女の身体を捕らえる瞬間、破裂し、凍りつき、動きを封じる。女の関節を集中的に狙い、女の動きが制限される。


「ダイアモンド・ダスト」


その瞬間だった。


結衣は隙を逃すことなく、追い撃ちをかける。


身が凍りつく瞬間、女は陰の気を外へと放出し、身を守る。


「…強い」


「…あんまり褒められたくない言葉なんだけど」


銃口と、鋭い視線を投げ掛けながら、結衣が答える。


「霞…。やっぱり立ちはだかるのは貴女だったね」


「?」


陰が女から立ち込める。


「私の名はセラ=シグマ・ローゼンガルド。全力で貴女を倒す」


名乗らなかった名を、自ら名乗る。セラのその姿を見て、結衣は感じ取った。


―――確固たる決意…。この人、強い。


セラに対して向けた銃口が、一瞬迷いで鈍った。


その隙をセラは決して逃がさない。空に手を翳し、陰の気を弾丸の雨の様に変化させ、結衣を襲った。
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