今宵、月の照らす街で

「がはっ…！」


成二が天叢を床に刺し、自らの身体を支える。膝を震わせながらも、決して闘志を消そうとしない。


「もう終わりか、成二」


その声の主、月那主宮廉明は、一歩一歩成二に近寄る。


その歩いた軌跡には、明奈が力無く倒れていた。


「明奈さん…っ！」


師を目にし、成二が再び天叢を構える。


「おぉ、師弟愛は美しいな」


廉明は両手を広げ、大袈裟に感想を述べた。


「お前が傷だらけなのを庇って真っ先に走ったものの、所詮この程度だ」


明奈を見下した後、廉明は紘子に視線を向ける。


「おい…何処見てる……！」


成二がその視線に焦りを覚える。


「アナンベルが言ったろう？俺も貴様…いいや、小龍沢の全てを否定してやる」


「おい、てめぇ！！止まれ！！」


成二が焦って廉明に突進する。だが、それも虚しく、廉明の創り出す陰の壁が成二を阻む。


紘子は覚悟を決め、千鶴を護るように一歩前に出る。


「やめろ！やめろぉォォ！！！」


成二が涙ながら叫ぶ。


その断末魔の叫びが、廉明の顔を緩ませる。その手に、陰の槍が宿った。


「今、楽にしてやるよ、紘子」