今宵、月の照らす街で
紘子がチャクラムに風を集め、廉明に相対する。


―――姉さん…成二…!


紘子が唇を噛み締め、廉明に接近戦を持ち込もうと脚に力を入れる。


その時、天玉院の間に嵐の波動が流れ込んだ。


「姉さん!!」
「多香姉ッ!!」


荒々しい嵐を従えた多香子が、静かに一歩一歩廉明に近付く。


「来たか…」


廉明が矛先を変える。


「もう陰は操らないの?」


多香子が冷静に周りを見る。


「全て我が力に変えたわ。最早、要らぬ。ゴミの掃除は済んだからな」


廉明は、天玉院の間に倒れる多香子の仲間を見渡した。


「…ゴミ?」


「そう。ゴミだ」


多香子は遠く離れる廉明に、閉じた右手を向けた。そしてそのまま右手を開く。


その瞬間、廉明の身体に突風がぶつかる。身体に何トンとも思える程の圧力に耐え切れず、陰の力を使いながらも後ずさる。


「ほう…」


「もう戯言は許さない。アナタはここで斬る!!」


轟音が響き、多香子の髪が激しく揺れる。その中、多香子の右手に嵐紋菊一文字真打が現れる。


「面白い…!貴様の嵐を真っ正面から打ち砕こう!!真のこの国の覇者は誰なのか!証明してくれるわ!!」
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