今宵、月の照らす街で
遥か後方まで飛ばされた揚句、石畳に身体を叩き付けられる。


―――しくじった…


視界が狭くなり、徐々に景色がぼやける。


「セージ!」


ソフィが近寄ってくる。


「馬鹿…!逃げろ!!」


身体を起こして敵を退けようする成二だが、既にその眼前には鬼神が立っていた。


―――これまでか…


鋭い爪が天に掲げられる。


大剣を換装する暇も無い。


諦めて眼を閉じるその時、鬼神と成二の間に人影が入って来るのが見えた。


「…たか姉?」


再び目を開くと、黄昏の光に反射した髪をなびかせて、小龍沢家当主が敵と対峙していた。


「下がっていなさい、成二」


背を向けたまま、敵の振り下ろされる鉄槌を左手で、真正面から受け止める。


多香子の足元の石畳はバキッ、と音を立てて割れた。


「…嵐紋菊一文字正宗」


呟きと同時に、鬼神の一撃を受け止めたその手に風が収束し、鬼神の腕を弾く。同時に2mに達する程の野太刀が姿を現した。
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