今宵、月の照らす街で
黒をベースにした、モダンブラックの空間を、数多くの照明ときらびやかな鏡が光を散らす。


「いらっしゃいませぇ!!!」


男のむさ苦しい怒号が、入口に立つ成二を迎えた。


「…」


何をしていいのか解らない成二の腕をがっしり掴んでいた、ロングの髪にウェーブをかけた、春日明奈[カスガ アキナ]が全て話を進める。


「せぇじ、行こ?」


「はぁ…」


ちなみに言っておくが、ここは新宿歌舞伎町のキャバクラ。


明奈は一応、陰陽師でここのキャバ嬢という、だいぶ異色の対策室メンバーだ。


初めて…いや、むしろ未成年にはどうやっても体験出来ない大人の世界。


明奈は成二を席に誘導すると、コーラをスタッフに頼んだ。


「緊張しすぎ!せぇじ、そんなんじゃ任務果たせないよ?」


「明奈さんは無防備過ぎです」


成二はキャバ嬢の胸元ががばっと広がるドレスから、懸命に視線を逸らす。


「仕事なのよ、シ・ゴ・ト」
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