今宵、月の照らす街で
「…確かに陰がありますね」


肌でどことなくピリピリとした気配を感じた。


「これが毎日強くなってるの…この気に当てられる娘も多くてね…」


明奈の言葉を聞きながら、成二はコーラを飲む。明奈の眼は、少し憂いを帯びていた。


「…」


「…で?」


「はい?」


「せぇじの本命は?」


成二の大腿に手を置いて、明奈の小さい身体から上目使いを駆使して覗き込んで来る。


「…は?」


身体を密着させて悪戯っぽく見つめる23歳女性…。


こうなると心底めんどくさい。


成二がそう思った途端に、陰の波動が溢れて来た。


「!!!」


「来た!!!」


天井を見上げると、異形の姿がきらびやかなライトを覆っていた。


周りに悟られぬ様に立ち上がり、明奈は指を鳴らす。


それをきっかけにして仕組んだ術式が発動した。


異形のモノは驚き、壁に影を作り、部屋から消える。


「康介、そっちに行ったよ!」


ピンマイクに明奈が声を入れる。


「店長〜!私、抜けますね」


明奈がナイトドレスにピンヒールのまま走り出す。


「せぇじ!行くよ!」


小さなお姉さんは勢いよく華やかなネオン街への扉を開いた。
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