今宵、月の照らす街で
「たかこ〜、帰ったわよ〜」


「ただいま、姉さん」


対策室には場違いなナイトドレスにエスコートされて、成二は対策室室長執務室に入る。


「お帰りなさい明奈さん、成二」


成二の腕に明奈がしがみついていたからか、姉からの視線が少し厳しい。


「報告。本日新宿歌舞伎町クラブagehaに於いて21時49分に対象Aと接触。同時刻56分に対象除霊完了。春日班、消滅確認後帰還、以上」


腕を絡めたまま、多香子に報告を済ませる。


少し気まずさを感じたまま、成二は姉を見た。


暗い笑みを浮かべているのは気のせいではないらしい。


「多ぁ香子ぉ…せぇじ、借りるわよ?」


「「は?」」


唐突な言葉に、姉弟がハモるのも無理はない。


弟の方はよくわからないまま、姉は執務室の机で腕を組んで、小さな息を漏らした。


「…わかりました。任せましたよ、明奈さん」
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