今宵、月の照らす街で
―――俺はどうすればいい?


「困った顔してる…そりゃぁそぉだよね。多香子と真逆な事言ったもの」


楽しんでるような明奈の笑顔。それを見たら、苛立ちしが頭を支配した。


「明奈さん…!!」


「何に苛立ってるの」


明奈は、熱で朱くなった肌から缶コーヒーを離す。


今度は人差し指で顎をツンと上げた。


「私に?私の言ったことに?」


―――違う。俺が苛立ってるのは…


「せぇじが苛立ちを感じてるのは、自分自身に…でしょ?」


「…!」


想いと明奈の言葉が重なる。


「自分の事を自分で決められない…自分から逃げる自分が嫌なんでしょ?」


近くにある整った小顔に、憂いを帯びた瞳が見える。


その瞳に吸い込まれ、成二の中にある全てが見透かされている様な感覚に堕ちた。


気付いたら、自分の全てを吐き出そうと口を開いていた。


「俺は…ッ!」


明奈は成二の口をそっと覆い、首を横に振る。


「せぇじ、今日から私が貴方を導いてあげる」
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