今宵、月の照らす街で
「…あいつか」


任務中、出会った蒼玉の瞳の持ち主…一度ソフィ本人かと思われた、漆黒を纏う女性…。


「知ってるの!?」


その呟きにソフィが身を乗り出す。


言うか言うまいか悩んだが、眼前の視線に嘘はつけない。


情報は無いが、状況だけを伝えようと、成二は唇にキュッと力を入れた。


ブブブブ…とタイミングをはかったかの様に、床に置いたケータイが震える。


バックディスプレイに、蛍光ペンの緑色に近い色が、「春日明奈」の名を記した。


「わり………もしもし?」


『学校、球技大会なんだって?』


―――何で知ってんだ…?


唐突な言葉に驚き、また、呆れる。


「はい…まぁ…」


『じゃあ適当にサボって私の家に来る事。異論は認めないわ。せぇじの担任には私の名前、出しといて?』


「は?え…明奈さん?」


一定間隔のつまらない音がエンドレス・リピート。


つまり、通話終了。


なんだか嫌な予感しか感じられなかった。
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