今宵、月の照らす街で
「お前…誓約書にサインしたろ。漏らしたら即逮捕、おまけに重罪だ」


ソフィは、まずいと言わんばかりの表情を浮かべる。


「あ…忘れてた…」


まぁこの場には誰もいないので、とやかくは言うまい。


「で?何だ?」


要件を尋ねると、ソフィは少し物憂気に俯く。


「私ね…妹を捜してるの」


「妹?」


流石にゴロゴロして聞くのはなんだと思い、成二は身体を起こした。


「私達の親は2年前死んだ…双子の妹は、両親は殺された、そう言ってた」


「…公式記録は?」


「交通事故…車の少ない谷の道で、夜に…動物か何かが飛び出した時にハンドルを誤って…」


確かに、気にかかると言えば、気にかかるケースだ。


「そこまで発表されながら、妹はなんでそんな事を」


「私達が事故の現場に連れて行かれた時、鬼がいた、って言ったの」


また気になる点が一つ。


「おじいちゃんと妹はよく一緒にいたから…おじいちゃんに鬼を教えてもらったのかも。私の家って、そういうの見えるんだって」


ソフィの蒼い瞳を覗く。


途端にある記憶が、成二の頭を過ぎった。
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